井上 洋子(いのうえ ようこ)
「10 秒でよいのです。⼦どもと向き合いましょう。」という⾔葉に出会ったことをきっかけに、「10 秒の愛」の活動を琴浦町で広げ 、⿃取県 PTA連合会初の⼥性会⻑としても活動してきました。
52 歳で認知症の診断を受けた後も、「⾃分にできることを続けていきたい」という思いを胸に、現在も特別養護⽼⼈ホームでボランティアを続けています。
地域の運動会にも参加しています。仲間と一緒に身体を動かし、笑い合える時間が、私の楽しみの一つです。
鳥大生のみなさんと、私の生まれ故郷である三朝町を散策しました。懐かしい景色を眺めながら、思い出を振り返る時間になりました。
鳥取県PTA連合会の活動で出会った仲間が、お寺に集まってくれました。今でもつながりが続いていることを嬉しく思っています。
2025年 3月20日 認知症のイメージを変えるフォーラム「認知症の人と共に創る地域共生社会」で公開したインタビュー動画です。
ー人と向き合うことが、私の原点
中学ではソフトボール、⾼校では吹奏楽部でクラリネットを担当し、⼤学では再びソフトボールに打ち込みました。
振り返ってみると、学⽣時代はいつも仲間に囲まれて過ごしていたように思います。
⼤学では社会学を学びながら教職課程を修了し、「先⽣になりたい」という思いを持つようになりました。採⽤試験を前に出産を経験し、⼦育てを優先する道を選びましたが、その後は県や町の⼩学校講師として学校現場に⽴ち続けました。
「先⽣の仕事が好きで、それをずっとやりたい」
その気持ちはずっと変わりませんでした。
⼦どもたちと向き合う時間は、私にとってかけがえのないものでしたし、⼈と向き合うことの⼤切さを教えてくれた時間でもありました。
ー「10秒の愛」― 仲間と広げた活動
転機となったのは、⼦どもたちが通う⼩学校で PTA 会⻑をしていた頃でした。
ある講演会で、
「10 秒でよいのです。⼦どもと向き合いましょう」という⾔葉を聞き、とても⼼を動かされました。私はその⾔葉を「10 秒の愛」と名付け、地域での活動を始めました。
⼦どもを⼀⼈の⼈として⾒つめ、ほんの少しでもしっかり向き合う。その積み重ねを⼤切にした活動は、地域の
仲間たちとともに少しずつ広がっていきました。
やがて「琴浦町 10 秒の愛実⾏委員会」が⽴ち上がり、私は初代会⻑を務めました。その後は県内外で講演をした
り、⿃取県 PTA 連合会初の⼥性会⻑を務めたりする機会もいただきました。
今振り返ると、⾃分⼀⼈の⼒でできたことではなかったと思っています。
「いい⾒本があったからだと思います 。⾃分がしなくてはいけないじゃなくて、みんなでできたものだったり。
その頃の仲間の⽅がね、良かったんだなと」
そんなふうに思います。
私にとって「10 秒の愛」は、⼀⼈で広げた活動ではなく、多くの仲間と⼀緒につくり上げてきた⼤切な活動でした。

「10秒の愛」の活動グッズ
ー診断後に訪れた転機
52 歳のとき、認知症と診断されました。診断を受けてからしばらくは、不安な気持ちもありました。
そんなある⽇、新聞で認知症の当事者として活動されている藤⽥和⼦さんの記事を⽬にしました。
「認知症になっても、こんなふうに暮らしている⼈がいるんだ」
そう思い、実際にお会いする機会をいただきました。藤⽥さんとお話をする中で、認知症になってからも⾃分ら
しく暮らし続けることができるのだと感じ、この出会いは私が前を向く⼤きなきっかけとなりました。
ー「続けたい」という意志
認知症と診断されたあとも、私は⼩学校の⽀援員として働き続けました。
校⻑先⽣からは「続けてほしい」と⾔っていただきました。
それでも、
「⾃分が仕事を続けていいのだろうか」
「迷惑をかけていないだろうか」
という不安はありました。
親友にも相談し、「続けた⽅がいい」と背中を押してもらいました。
そして職員会議の場で、⾃ら認知症であることを伝えました。
「私は認知症です」
勇気を出してそう伝え、「この職場で働き続けたい」という思いを話しました。
仲間たちはその思いを受け⽌めてくれました。
その後も 3 年間、学校で働き続けることができました。
今振り返ると、あの時⽀えてくれた仲間たちの存在が、私にとって⼤きな⼒になっていたのだと思います。
ー今できることを、これからも
退職後しばらくして、私は家族にこう話しました。
「なんかやりたいよね」
「⼈の役に⽴つことをしたいな」
地域包括⽀援センターに相談し、私が選んだのは⾼齢者施設でのボランティア活動でした。
現在は平⽇の午前中、地域の施設に通い、利⽤者の⽅のお話を聞いたり、⼀緒に作業をしたりしています。
認知症になったあとも、私が⼤切にしているのは「普通通り」の毎⽇です。
「普通通りですね」
「⾃分の普通通りで⽣活できるっていうのは本当にありがたいこと」
そう思いながら暮らしています。
そのために、引き出しには中⾝を書いたメモを貼ったり、予定はアラーム機能を使って確認したり、⾃分なりの⼯夫も続けています。
認知症になっても、私は私です。
周りの⼈たちに⽀えられながら、これからも今できることを続けていきたいと思っています。

ボランティア先の施設での一枚
ー周りの人たちがいてこそ
これからも、いろいろなところへ出かけたり、みんなと⼀緒に楽しんだりしながら過ごしていきたいと思っています。
「一人じゃない」
「たくさんの⼈に応援してもらえるような⾃分でありたい」
そう思えるのは、これまでたくさんの⼈に⽀えてもらってきたからです。
そして今も、
「周りの⼈たちがいてこそ」と私は思っています。
その気持ちは変わりません。
これからも周りの⼈たちへの感謝を忘れず 、⼈とのつながりを⼤切にしながら、⾃分らしく歩んでいきたいと思っています。
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